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夢枕獏の文体のガイドライン

1 :水先案名無い人:2005/06/08(水) 23:51:04 ID:HdWJfha90
すぐにスレを立てた。
拳。
拳。
肘。
足。
肘。
踵。
指。
拳。
みごとな攻撃であった。

関連スレ
夢枕獏×板垣恵介【餓狼伝】23 板垣シェーダ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1115364612/l50
【放置プレイ】夢枕獏 巻之五【続行中】
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1106812422/l50

867 :水先案名無い人:2005/08/23(火) 08:07:29 ID:3pTuJroi0
男は自転車のペダルを漕いでいる。
明け方である。
自転車には二人乗っていた。
錆び付いた車輪は悲鳴を上げている。
行き先は駅――

背中から大きな力が伝わってくる。
寄りかかる温もりに他ならない。
線路沿いの上り坂に差し掛かったときだ。
「あともう少しだ」 
後ろに乗った男が楽しそうな声で話しかける。

町はとても静か過ぎる。
と――
ふいに小さくこぼす。
「世界中に二人だけのようだな――」
同時に言葉を失くす。
坂を上りきった時の朝焼けはあまりに綺麗過ぎた。

「おめぇあの時笑ったろう?」
「!?」
「おいらの後ろ側でよう」
男は振り返っていなかった。
その目には涙が浮かんでいたのだ。


868 :水先案名無い人:2005/08/23(火) 08:09:02 ID:3pTuJroi0
遠い町だ。
券売機で一番端の切符。
一番高い切符で行く町はあまりに遠い。
そんな町を自分が知る由もない。
しかし入場券は一番安い。
男はすぐに使うのに大事にしまった。

紐が大きい
チャックが大きい
サイドポケットが大きい
ロゴまで大きかった。
おととい買った大きな鞄であった。

改札に鞄を引っ掛けて通れずに男を見る。
目は合わせられない――
鞄の紐は頑なに引っかかっている。
男の手がそれを外した。

ホームにベルが鳴り響く。
これが最後か――
一人のためだけにドアが開く。
たった一歩
しかし何万歩より距離のある一歩だった。
その一歩踏み出す。

「約束だ――必ずいつの日かまた会おう」
応えられなかった。
俯いたまま拳を振るしかなかった。


869 :水先案名無い人:2005/08/23(火) 08:11:20 ID:3pTuJroi0
「間違いねぇ――あん時おめぇは……」

線路沿いの下り坂を自転車が下って行く。
それだけなら分かる。
風よりも早くだ――
ありえない。
ありえない早さで飛ばしていく。
電車に追いつけと。
錆び付いた車輪は悲鳴を上げている。
自転車は電車に近づく。
すうっ、
と電車に並んだ瞬間、電車は加速しゆっくり離されていった。

「おめぇあの時泣いてたろう?」
「!?」 
「声が震えてたぜ――」
ドアの向こう側。
顔を見なくてもわかっていた。
「約束だ――必ずいつの日かまた会おう」
離れていく。
見えるようにただ大きく拳を振った。

町は賑わいだした。
しかし――
「世界中に一人だけみたいだよう」
男は小さくこぼした。

自転車は残された男を運ぶ。
錆び付いた車輪は悲鳴を上げている。
微かな温もりが男をさらに悲壮感を漂わせていた。

たまらぬ車輪の唄であった。

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